社労士試験の救済とは(社会保険労務士試験)

⑩社会保険労務士試験

 

 

社会保険労務士試験(以下社労士試験)には一般的に「救済」と呼ばれる制度があります。

 

社労士試験は選択式40点満点 択一式70点満点の試験で

合格点は選択式28点 選択式49点です。

 

「あれ?社労士試験の合格点ってもっと低かったよな?」

 

と思う人もいると思いますがそれが救済と呼ばれる補正になります。

 

まず総得点の補正は受験者の平均点を元に補正されます。

 

①選択式試験、択一式試験それぞれの総得点について、前年度の平均点との差を少数点
第1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ
下げする(例えば、差が△1.4点なら1点下げ、+1.6点なら2点上げる。)。
※ 前年の平均点との差により合格基準点の上下を行うが、前年に下記③の補正があっ
た場合は、③の補正が行われなかった直近の年度の平均点も考慮する。

②上記①の補正により、合格基準点を上下させた際、四捨五入によって切り捨て又は繰
り入れされた小数点第1位以下の端数については、平成13年度以降、累計し、±1点
以上となった場合は、合格基準点に反映させる。ただし、これにより例年の合格率(平
成12年度以後の平均合格率)との乖離が反映前よりも大きくなった場合は、この限り
ではない。

③下記(2)の各科目の最低点引き下げを2科目以上行ったことにより、例年の合格率と
比べ高くなるとき(概ね10%を目安)は、試験の水準維持を考慮し合格基準点を1点
足し上げる。

厚生労働省「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」より

 

つまり平成13年度からの平均点を元に社労士試験の合格点は常に変動することになり

この変動後の点数が合格点となります。

 

一方社労士試験には基準点というものがあり

各科目でとらないといけない最低点というものがあります。

選択式で3点、択一式で4点。

これを選択式8科目 択一式7科目全て越えなければいけません。

しかしこれにも補正があり

 

各科目の合格基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満
たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。
ただし、次の場合は、試験の水準維持を考慮し、原則として引き下げを行わないことと
する。
ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合
ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合

厚生労働省「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」より

 

というルールがあります。

これにより年度によっては選択式の基準点が3点から2点に引き下げられたりします。

これを一般的に「救済」と呼んでるわけですね。

 

さてここからが本題ですが社労士試験をこの上記の基準を使って

合格率を出した場合どうなるでしょう。

 

これについては推測になりますがTKTKさんという方が厚生労働省との戦いの末獲得したデータをもとに飛翔さんの解説を踏まえてみてみましょう。(厚生労働省との戦いについてはまた別のコラムで)

 

社労士試験の合格率はまず補正を前提とした選択式と択一式の総得点で

フィルターをかけると大体10~14%になります。

ここでさらに選択式の基準点(補正なし)をすべて満たした人のフィルターをかけると

合格率が2~3%になると言われています。

司法試験も真っ青の難関資格ですね。

しかしそれでは制度自体が成り立たなくなりますので

ここで選択式の補正を入れて調整しているというわけです。

まず選択式の原則補正と呼ばれるものを入れて調整すると大体合格率が5~7%になってきます。

これが社労士試験の合格率となります。

この原則補正を入れてもまだ合格率が低い場合は例外補正と呼ばれる補正をかけます。

この補正が厚生労働省の裁量によって行われているため

社労士試験では一大論争が巻き起こり、TKTKさんによる情報公開裁判の結果

社労士試験の合格基準の考え方他の貴重な資料が一般的に公開される運びとなりました。

令和3年度試験はこの例外補正を行っても合格率が7.9%でしたので

例外補正がなければ合格率は3~4%ではなかったかと言われています。

令和4年度試験は選択式が例年に比べて簡単と言われ原則補正すらありませんでした。

この補正なしでの合格率が5.3%だったということになります。

 

このように社労士試験の救済とは合格率を調整するために存在し

原則補正はルールがあるが例外補正は厚生労働省の裁量によって決められている

ということになります。